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キになる視点

●DXの前に見直すべき会社の経営戦略

掲載日:2021.07.20

 

昨今DX(=デジタルトランスフォーメーション)がバズワード化している中で、わが社はやらなくていいのか?あるいはどうすべきか?と考えている経営者はたくさんいるだろう。あるいは既に始めていてうまくいっていない事業者もいるかもしれない。

会社で本格的に推進していくときに、大きく3つの観点で、今の経営戦略も含めて見直していく/留意してもらいたい普遍的なポイントがあるのでご紹介したい。

【※なお、DXそのものの意味や解釈はTREND WORDの「DX」参照】

 

① 経営理念とデジタルテクノロジーの距離を定義すること

会社のミッション・ビジョン・バリューに合うテクノロジー分野が一般的にはあるのだが、多くの企業はそれを見失っている。筆者もよく企業のアドバイザリーとして伴走することがあるが、会社のミッションとビジョンをブレークダウンしたときに、出てくる未来像へフィットする事業分野や技術分野へ資金やリソースを優先的にあてがうように配分を検討していく必要がある。

例えば、同じ業界業種である競合A社と競合B社と自社が同じDX戦略、同じ打ち手をしたときに、競争優位がつくれるだろうか?

単に予算を使ったチキンレースが続くだけである。事業戦略での差別化やリソース分配と同じように、DXにも優位性をつくっていく分野を見つけて戦略を立てていくことが極めて重要になる。

 

② 現状の経営計画の見直し

もともとDXを実施検討する前の戦略が、DXを行う中でもそのままベース戦略として活用できるか立ち返る必要がある。DXによって取り得る手段が、選択肢として入っていない前提で、組み立てた戦略がそのままだったり、他社がDXを活かしたらディスラプトできるような内容が入ってしまっている恐れもある。

DXを考え始めた時点で、そもそもその時の経営計画がワークできるのか見直すこと。そして、改めて従来戦略の中でどこにDX位置付けて推進するのか、ストラクチャーを明示して進めていくことが大切なのである。

経営計画を見直すと同時にそのメッセージングも重要になる。

DXは社内外のステークホルダーが極めて多い取り組みになる。最低でも経営陣とプロジェクト責任者、IT部門とマーケティング部門、法務、渉外、広報、ベンダーやアドバイザーも含めて非常に多岐にわたるだろう。投資額も基本的に億単位で行うことがほとんどであり、影響も大きなものになる。 

そのため、DX実施前の経営戦略見直し後に、メッセージングを改めて、TOPあるいは責任者から強く行うことが重要である。具体的には、「その変革はどういう目的で行われて、何が重要であり、目指している先は何なのか」という内容を抜粋して伝える。それを全関係者で適切にシェアしていくことがプロジェクトの成功確率を高める。

 

③ 経営におけるパートナーの見直し

DXを行うに際しても「いつもの」「お抱えの」コンサルティング会社やベンダー、その他業者の提案を鵜呑みにしていないか、あるいは逆に新参者だからと意味もなく否定していないだろうか?自前だけでできないのに無理をして実施しようとしていないだろうか?

DXとは、組織・事業活動全般をデジタルテクノロジーという手段を用いて転換させることを指す概念に過ぎない。よって、非常に意味も範囲も広いため、さまざまな見解がある分野である。各人の得意不得意も違うわけで、バイアスも多々ある。

残念ながら特効薬的なものもないので、どの企業と一緒にやると正解かもこれまでのルールとは異なるのである。本当にそのために自前で、または外製で行うことが最適なのか? 

外製の場合はその会社でいいのか? それ自体を客観視してレビューしていくことが重要になる。

また、DXの中でこれまでの財務的な構造や契約関係が大きく変わる場合は、出資やレベニューシェア、共同事業など座組を変えて共創的な関係に切り替えたほうがよい関係者もいるだろう。DXがそれまでの事業パートナーやお取引先様との関係を見直す契機にもなるということだ。

 

トレンドだから、他の経営者から聞いて、他社もやっているから、というのは考えるきっかけとして間違っているわけではない。

しかし、DXが本来持っている価値や可能性、影響範囲から事業活動や経営戦略そのもののレイヤーであり、そもそものレゾンデートルから検討しないといけない事項があることは、理解しておくべくだろう。

この記事を書いた人

片山智弘 かたやま ともひろ

株式会社電通 事業共創局 シニア・ビジネス・ブロデューサー
株式会社セガ エックスディー 取締役執行役員 CSO
1987 年、東京都生まれ。2010 年、慶應義塾大学理工学部卒業後、慶應義塾大学大学院在学中に就職活動の採用試験を練習するイーラーニングサービスで起業。2 年間経営後にサイト M&A で売却。2012 年、大学院修了と共に株式会社電通へ入社。
電通入社後は、一貫して新規事業部署に所属。デジタルテクノロジーおよびビジネスメソドロジーを活かした様々な事業開発を歴任。並行して、オープンイノベーションによる協業推進の責任者や、デジタル環境戦略と UXに関するアドバイザリー業務も実施。
2019 年 7 月より、セガ エックスディーへの合並会社としての電通の資本参画を契機に取締役を兼任。

担当者の主な著書